住まいを建て替えるときに知っておきたいメリット・デメリット

築年数が経過したお住いでは、劣化が進んで建て替えやリフォームが検討されます。築年数がある程度経っている住宅では「リフォームにするか」「建て替えるか」と悩む方も多いのではないでしょうか。リフォームも建て替えもそれぞれ選ばれる理由があります。そこで今回は、住まいの建て替えを検討するときに知っておきたい、メリットとデメリットをくわしく解説していきましょう。

建て替えとリフォームのちがいとは?

建て替えとリフォームにはどのようなちがいがあるのでしょうか。一般的な住宅では、新築してから約10年あたりから外壁や屋根、設備などに経年劣化が目立つことが多いです。また、年数が経過するうちに家族構成に変化があり、より使い勝手のよい間取りにしたいなどの希望が生まれてきます。

建て替えるかリフォームするかの選択は、それぞれのケースによって判断するべきものです。基礎的な知識として、建て替えとリフォームの定義について知っておきましょう。

■建て替えの定義とは

建て替えとは、既存住宅を基礎部分から取り壊して新たに住宅を建て直すことです。建て替えて新たに建築する住宅は、原則として現在の建築基準法に適合する必要があります。

例えば、建築基準法で定められている「原則として敷地が道路に2m以上接していて、かつ面している道路の幅が4m以上でなければならない」という条件があります(接道条件)。

これに当てはまらない細い路地のみに面している敷地では、建て替えることは難しいため、リフォームで対応することが多いのが現状です。

現在の建築基準法に合った住宅を建てられない「再建築不可物件」に当たるかどうかを、最初に確認することが重要です。

■リフォームの定義とは

リフォームとは、既存住宅の基礎部分は残して、部分的な改築、改修、補強、増築などを行う工事を指します。リフォームの規模はさまざまで、部分的な工事には水廻りのリフォーム、外壁や屋根の塗装工事などがあります。

また、大規模なリフォーム工事のなかには、住宅の基礎と柱、小屋組みなどを残して他の部分をすべてリフォームするフルリフォーム、間取りや水廻りの位置を変えるスケルトンリフォームなどがあげられます。

住まいを建て替えるときに注意すべき点

これから先も長く住み続けられる住宅にするためには、建て替え、リフォームのどちらを選択すればよいのでしょうか。選ぶときの参考になる、建て替えとリフォームそれぞれのメリットについてご紹介しましょう。

■建て替えのメリット

理想の間取りが手に入る

「家族構成が大きく変化した」「水廻りなどの場所を移動したい」など、大規模な間取りの変更を希望される場合は建て替えがおすすめです。大きく間取りを変更する際には、住宅全体の基礎や構造に関わる部分の工事が必要になります。

高齢者世帯との同居による二世帯住宅の計画などでは、バリアフリー対策が必須です。住まいの「暮らし方の変化」に対応して、理想の間取りを実現するには建て替えが向いているケースが多いといえます。

低金利でローンが組める

既存住宅の基礎部分を取り壊して建て替える場合には、リフォームと比較するとローンを低金利で借り入れられます。リフォームに比べて建築費用がかかる建て替えでは、多額の資金が必要になります。金利が低く、借入期間が長い住宅ローンを利用できることは大きなメリットといえるでしょう。

地盤改良ができる

リフォームでも筋交いや面材による補強や、耐震金具、屋根の軽量化などで住宅の耐震性能を高められます。しかし、建て替えでなければできないのが、地盤改良をともなう工事です。

いくら住宅の耐震性能を高めても、住宅が建っている土地自体が軟弱であれば大きな地震がやってきたときには被害から逃れられません。基礎部分まで取り壊す建て替えでは、敷地の地盤調査を行って必要な場合には地盤改良を施せるのが大きなメリットです。

住宅の構造に関わる部分を補強することが可能

住宅の耐震診断をして大規模な改修が必要なときには、リフォームよりも建て替えの方が安くすむケースがあります。既存住宅の基礎が古くて強度や耐久性に問題がある場合には、1ヶ所ずつ改修することでコストが膨らみがちです。

建て替えを選択することで、断熱工事やバリアフリー対策、省エネルギー化など、複数の改修する要素を盛り込みやすくなります。お住まいの建物に改修したい、あるいは改修すべき点が多いときには、建て替えを選んで安心・安全な暮らしを実現しましょう。

■リフォームのメリット

住みながら工事ができる

リフォームの最大のメリットは、部分的な改修や補修にとどまる場合は引っ越しが必要ない点です。住み慣れた家で暮らしながら工事するため、手間や費用の負担がありません。

システムキッチンの入れ替えや浴室のリフォームなどの水回りにしぼったリフォーム、外壁や屋根が劣化したことに対応するリフォームなど、あらかじめ範囲が決まっていれば、住みながらのリフォーム工事で十分対応が可能でしょう。

工期が短い

標準的なリフォームの工期は工事範囲にもよりますが、長くて約1ヶ月程度です。一方、建て替え工事では工期は約4ヶ月~半年ほどかかります。

短期間で今の住まいの雰囲気を残しながら、便利で新しい設備を導入できるのはリフォームのメリットです。補修や改修の範囲が限定されているときには便利な手法といえます。

建て替えができない住宅の改修ができる

「再建築不可物件」や「既存不適格建築物」と呼ばれる、現行の建築基準法に適合していない住宅は、建て替えが難しいケースが多いです。建て替えた後の新築住宅を狭くする、接道条件を満たすために道路から離して建てる(セットバック)などの工夫が必要です。

基礎部分を残すフルリフォームやスケルトンリフォームであれば、既存住宅が建築された時点での法律に適合していれば工事ができます。建て替えが難しい敷地の住宅はリフォームで新しい住環境を実現しましょう。

■建て替えのデメリット

引っ越しが2回必要になる

既存住宅を取り壊す建て替えでは、仮住まいの確保と引っ越しが必要になります。家族構成が新しくなるなど、ガラリと生活環境が変化する際には引っ越しをきっかけに物を減らすなど良い機会ともとらえられています。

しかし、2回の引っ越しの手間と費用はやはり大きな負担と感じる人も多いようです。

建て替えが不可能な住宅もある

前述のとおり、既存の住宅を取り壊して建てる新しい住宅は、現行の法規に適合していなければなりません。建物が建った後で建築基準法に改正があった場合は、既存の建物を法律に合わせて改修する必要はありません。

しかし、壊して建てるときは、その時点での法律に合わせて建築することになります。建築基準法では、防災面から特に住宅の敷地が道路に接している条件が細かく定められています。接道条件を満たさない「再建築不可物件」では建て替えは難しいといえるでしょう。

住まいが小さくなることも

建築基準法や自治体の条例の改正によって、敷地の建ぺい率が減少していることがあります。建ぺい率とは敷地に対する建築面積(わかりやすくいうと、おおよそ1階部分の面積)のことです。

建ぺい率や容積率(わかりやすくいうと、おおよそ1階と2階の面積の合計)は都市計画を立てる段階で、市町村ごとに細かく定められています。建て替えを計画する時点での敷地に対する条件を確認することが大切です。

■リフォームのデメリット

間取りを自由に変更できない

既存の住宅の構造によっては、間取りの変更が難しいことがあります。木造軸組工法や重量鉄骨造であれば、間取りの変更は比較的自由度が高いです。しかし、2×4工法や軽量鉄骨造などでは構造上動かせない壁が多く、リフォームで理想の間取りを実現するのは難しいでしょう。

ローンの金利が高い

前述のとおり、リフォームに関するローンは住宅ローンと比較すると金利が高く、借入額も少ないのがデメリットです。また、返済期間も短いため、部分リフォームには向いていますが、フルリフォームやスケルトンリフォームではローン以外の資金計画が重要になります。

追加費用が発生する場合がある

リフォームの大きなデメリットとしては、見積り額と実際の工事代金に差が生まれるケースが多いことです。思ってもみない場所が腐食していたり、破損していたりすると、追加工事が必要となり費用が膨らむ原因となります。

まとめ

戸建て住宅に暮らしていると、経年劣化や家族構成の変化によってリフォームや建て替えが必要になります。住宅の耐震や断熱性能を向上させたい、複数の箇所をリフォームしたい、間取りを大きく変更したいという場合には、リフォームよりも建て替えがおすすめです。

現在のお住まいで抱えている問題点を解消できる建て替えによって、理想の住まいを実現しましょう。

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