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2050年カーボンニュートラル実現に向かって、住宅・建築物の省エネ化が強力に推し進められています。2025年に全ての住宅・建築物に省エネ基準適合が義務付けられるのに先立ち、昨年2022年は様々な住宅関連制度の認定基準が改定され、要件が引き上げられました。より高い省エネ性能を有する住宅が補助・融資・税金などのあらゆる面で優遇されます。
選ばれる住宅事業者であり続けるために、各種制度の変更点を把握し、自社の「家づくり」に活かしたいと思います。
< 2025年適合義務化に向け「高性能化」は待ったなし >
現在、国を挙げて取り組むテーマの一つが、2050年カーボンニュートラルの実現です。そこで、国土交通省、経済産業省、環境省の3省連携による「脱炭素社会の実現に向けた住宅・建築物の省エネ対策のあり方検討会」が議論を取りまとめ、2021年8月にロードマップを公表しました。その後、国での検討が進められ、2022年6月17日、住宅・建築物の省エネ対策を加速させる「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、原則すべての建築物に省エネ基準適合が義務付けられることになりました。
公布から3年以内の2025年までに施工されます。省エネ基準適合義務化まではまだ猶予があるとお考えの住宅事業者もおられるかも知れないが、すでに周辺は活発に動いております。
新基準をクリアできないと?
例えば、昨年は住宅性能表示制度や長期優良住宅認定制度をはじめとする数々の住宅関連制度の認定基準の見直しが行われ、省エネ基準またはそれを上回る基準が要件化されました。
住宅ローン減税では、長期優良住宅ZEH水準省エネ住宅など、住宅の環境性能等に応じて控除対象となる借入限度額が変わってきます。一方、省エネ基準を満たしていない住宅は「その他の住宅」に区分され、2024年以降は原則、住宅ローン減税が受けられなくなります。
また、国土交通省が2022年度補正予算案に盛り込んだ新しい補助制度「こどもエコすまい支援事業」でも、新築の場合はZEH住宅が対象となります。
フラット35でも、2023年4月以降の設計検査申請分から、フラット35S等の金利引き下げメニューの適用の有無に関係なく、すべての新築住宅で省エネ基準を満たすことが求められます。
つまり、省エネ性能をアップデートせず、従来基準のままの住宅では、各種補助制度の要件をクリアできず、優遇措置が受けられなくなるという事です。当然、脱炭素時代に対応する住まいを提供できない住宅事業者は、消費者からも選んではもらえません。
2023年に取り組むべきことを整理するために、各種住宅関連制度の変更のポイントを確認してみましょう。
【 住宅性能表示 】
断熱等性能等級に5・6・7を追加
住宅性能表示制度ではこれまで、断熱等性能等級は省エネ基準相当の「等級4」、一次エネルギー消費量等級は省エネ基準に対して▲10%の「等級5」が表示できる最高等級でした。
だが昨年、これを上回る性能が表示できるようになりました。4月には断熱等性能等級はZEH基準相当の「等級5」、一次エネルギー消費量等級に「等級6」を新設。10月にはさらなる上位等級として、断熱等性能等級に「等級6」「等級7」を新設しました。
断熱等性能等級4と比較した場合、等級6は暖冷房の一次エネルギーをおおむね30%、等級7はおおむね40%削減できる水準に設定。戸建住宅の外皮平均熱貫流率は(UA値)の基準は、等級6を0.28(1地域)~0.46(7地域)、等級7を0.20(1地域)~0.26(7地域)としました。
一方、断熱性能を向上することにより壁体内部やRC躯体の温度が下がり、内部結露・表面結露を発生するリスクが高まるとして、等級6,7の結露防止対策の基準を引き上げました。通気層を設けない場合、1~3地域以外地域では防湿層の浸透抵抗値を0.144㎡・s・㎩/ng以上と設定しています。
また、これまで住宅性能表示制度を活用するには、断熱等性能等級または一次エネルギー消費量等級のいずれかが必須評価項目でしたが、これを変更しました。断熱等性能等級および一次エネルギー消費量等級が必須評価項目となりました。
今回、上位等級が新設されたことにより、ZEHレベルの住宅を証明する手段がBELS評価書だけでなく、住宅性能評価書でも対応可能になりました。省エネ性能とあわせて他の項目の性能も評価する場合、住宅性能評価書の利用を検討したいと思います。
【 長期優良住宅 】
断熱+耐震等級を引上げ
長期優良住宅認定制度の認定基準も見直され、昨年10月1日から戸建住宅では省エネ性能と耐震性能の基準が強化されました。
省エネ性能については、それまでは住宅性能表示制度の断熱等性能等級4を要件としてきましたが、新基準ではZEH水準の等級5が必須要件となりました。さらに、従来は不要でした住宅性能表示制度の一次エネルギー消費量等等級6が新たに求められるようになりました。
耐震性能については、壁量基準の見直しを実施。従来は住宅性能表示制度の耐震等級2または3が要件でしたが、近年は高性能な断熱材や窓、省エネ設備の設置などにより木造住宅が重量化しており、地震力が比例して大きくなることを踏まえて基準を整備しました。
改正後は、2階以下の木造住宅を壁量計算によって設計する場合は耐震等級3が必須となります。また、太陽光発電設備等を屋根に設置する場合は、その仕様に関わらず、「軽い屋根」であっても「重い屋根」の壁量基準に適合させる必要があります。
【 性能向上計画・低炭素建築物 】
断熱等性能等級5に引上げ
性能向上計画認定制度の認定基準でもある建築物省エネ法の誘導基準と、低炭素建築物の認定基準における省エネ性能の水準も昨年10月1日から引き上げられました。ZEHとの整合性を図る狙いがあります。
改正後はどちらも一次エネルギー消費量の基準(誘導BEI)を0.8に、強化外皮基準のUA値を0.40(1地域)~0.60(7地域)に引上げました。
また、低炭素建築物で選択要件でした再生可能エネルギー利用設備の設置が必須要件となりました。
【 フラット35 】
フラット35Sの省エネ基準強化し新区分ZEH創設
住宅金融支援機構は昨年10月1日、フラット35Sの基準を一部改正し、省エネ性の基準を強化するとともに、新区分として「ZEH」を創設しました。
例えば、新築の金利Aプランの基準が断熱等性能等級5・一次エネルギー消費量等級6に引上げられました。
新設された「ZEH」は、ZEH等の基準に適合することが要件となっており、これをクリアすると当初5年間は0.5%、6~10年目は0.25%金利を引き下げます。
省エネ性を強化する一方で耐震性などの基準に一部を緩和しました。例えば、中古住宅の金利Aプランでは断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級を上げる代わりに、耐震・バリアフリー・耐久性の基準を緩和しています。
また、フラット35については昨年10月以降の借入申込受付分から、長期優良住宅で借替融資を利用する際の最長返済期限を15年延長しました。
さらに文頭でも触れたように、2023年4月にフラット35の省エネ技術基準を見直し、金利引き下げメニュー適用の有無に関わらず、すべての新築住宅で断熱等性能等級4以上・一次エネルギー消費量等級4以上を要件化します。
これからも皆様から選ばれる住宅事業者であり続けるために、各種制度の変更点を把握し、武蔵野ビルドの「家づくり」に活かしてまいります。
ご覧いただきありがとうございます。
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