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2023年の戸建住宅市場のおけるキーワードは「建築費高騰と金利上昇」が挙げられます。新築戸建住宅の価格は上昇が続いております。さまざま要因が考えられますが、中でも建築費の高騰による影響は見過ごせません。加えて、金利の動向にも注目が集まります。
●ウッドショック等の影響で、建築費が高止まり
建設物価調査会によりますと、木造住宅の建設費指数(工事価格の動向を表す物価指数、2011年=100)はかねてより漸増傾向にありましたが、2021年から2022年にかけて急上昇し、2022年12月時点で141.7(暫定)まで高騰しています。その契機となったのは、2021年から起こった世界的な木材価格高騰(ウッドショック)であります。加えてロシアによるウクライナ侵攻を契機に政府が2022年4月よりロシア産木材の輸入を禁止したことも、木材価格をさらに押し上げる要因となりました。
木材住宅の建設費においてウエートの大きい「紙・木製品」の建設資材物価指数(建設資材の物価動向を表す指数、2011年=100)は、2021年4月以降上昇を続け、2022年6月~8月には160を超えました。その後は漸減しているものの、2020年以前の水準まで戻る見通しはつかず、高止まり状態が続いています。また、木材に限らず「窯業・土石製品」「金属製品」の指数も上昇が続いており、建築費の高騰が生じています。新築戸建住宅の建築費は当面高い水準が続く見通しであり、需要は抑制的となる可能性が高いです。
そして2023年は、金利の動向にも注目が集まります。世界的なインフレを背景に、欧米諸国は2022年に入ってから急速に政策金利の引き上げを進めてきました。一方、日銀は金融緩和の継続を名言しており、政策金利をマイナス金利に据え置く唯一の国として世界との違いが鮮明化していますが、2022年末に動きがありました。日銀は同年12月、10年物国債利回りの許容変動幅を0.25%から0.5%に拡大することで、イールドカーブ・コントロール(長短期金利操作)の柔軟化を図る金融政策の修正を行いました。この「修正」について、日銀総裁・黒田氏は「金利引き上げや金融引き締めではない」と説明しましたが、市場は事実上の利上げと受け止め、大手銀行各行は住宅ローンの固定金利を相次いで引き上げました。
もし今後、長期金利の更なる修正や、長きにわたる金融緩和政策の方向転換がなされた場合は、超低水準が続いてきた住宅ローン金利も上昇局面に転じて、需要停滞による戸建住宅価格の下落といった展開が想定されます。足元では長期金利操作に基づく住宅ローン固定金利の動きに注視しつつ、長期的には短期金利の引き上げに伴う変動金利への影響の可能性も視野に、引き続き動向を注視していく必要があります。
●価格高騰が続き戸建住宅需要は伸び悩む結果に
国土交通省が発表した建築着工統計調査報告によると、2022年の新設住宅着工戸数は約85万9000戸(前年比0.4%増)と、2年連続の増加となりました。内訳を見ますと、持家が約25万3000戸(同11.3%減)、分譲戸建てが約14万5000戸(同3.5%増)、分譲マンションが約10万8000戸(同6.8%増)、貸家が約34万5000戸(同7.4%増)となりました。なお、汎例の「持家」とは「建築主が自分で居住する目的で建築するもの」、つまり注文住宅に置き換えることができます。また「分譲戸建て」は「建売または分譲の目的で建築するもの」を示しています。
新設住宅着工戸数のうち、戸建てに着目して見ますと、持家については2022年1~12月まで前年同月比が12ヶ月連続で減少しています。コロナ過の先行き不透明感やサプライチェーンの混乱等のよって一時的に減退した戸建ての需要は、2020年後半~2021年末にかけて回復基調にありましたが、2022年に入ってからは一服し、需要減退に転じています。
一方、分譲戸建ては2022年10月まで18ヶ月連続で前年同月比増と堅調であります。2021年までの増加に引き続き、2022年も前年比で微増傾向となっています。住宅価格の顕著な上昇が続く中、注文住宅に手が届かなくなりつつある需要層が、割安感のある分譲戸建てに関心を移している可能性が考えられます。ただし不動産取引の状況を見ますと、新築戸建住宅の在庫件数は増加傾向にあります。首都圏(一都三県)におきましては、2021年6月に7384戸まで減少していた在庫戸数が、2022年12月には1万4432戸まで増加しました。近畿圏(二府一県)におきましては首都圏ほどの大幅な変動はないものの、2021年11月の3915戸を底に、2022年12月に4961戸まで増加が続いています。コロナ過における在庫不足状態から、供給が回復して以前の水準に戻りつつあると捉えることができますが、住宅価格の押し上げ要因が強く働いた結果として需要が減衰していることの表れと解釈することもできます。
●コロナ後の立地需要の変化や街の魅力向上に期待
新築戸建てを志向する需要層にとって「環境性能」への対応は今や避けて通れません。建築物省エネ法改正により2025年度以降、300㎡以下の住宅において、従来は努力義務のみであった省エネ基準への適合が義務化されます。長期的には2050年に向けてさらなる基準引き上げが予定されており、断熱化や高効率設備の設置に掛かる費用負担は増大していくこととなります。公的な住宅取得支援メニューにおいても、環境性能を要件化する方向に動いています。(独)住宅金融支援機構は2023年4月より、従来は「フラット35」における金利等優遇の対象としていたいくつかの省エネ対応を、省エネ法施行に先駆けて義務化します。また国土交通省が子育て世帯・若者夫婦世帯に向けて実施している「こどもエコ住まい支援事業」においても、ZEHレベルの省エネ性能等が必須となります。
今後の新築戸建て住宅市場において想定される中期的トレンドを整理いたします。供給サイドから見ますと、省エネ化すなわちハイスペック化の社会的要請に伴い建築費は高額化が見込まれ、同時に工事価格(建築資材費・人件費)も上昇が続いています。加えて今後金利が上昇するリスクは否定できず、供給事業者の事業資金借入コストの増大も想定されます。これらはいずれも住宅価格を押し上げる要因であります。一方で需要サイドにおきましては、大幅な賃金水準改善は望みにくい、物価上昇に伴い消費支出も鈍化している、景気も不透明感が続く等、ネガティブな要素が多いです。さらに長期的には、少子化・人口減少・単身世帯増加等の人口動態に伴い戸建住宅に対する需要は先細りが予想されます。価格上昇に対して需要が追い付かず、かといって供給側の事情により速やかな価格調整も見込めない場合は、価格が高止まりしたまま需要が弱含みで推移する恐れもあります。
他方で新たなニーズもあります。アフターコロナにおきましてテレワークが定着しつつある中、通勤距離の優先順位を下げ、郊外を新たな選択肢として挙げる世帯も少なくないでしょう。郊外や衛星都市におきましては、都市機能をコンパクトに集約・混在させることによる市街地の魅力向上や、MaaSやスマートシティ化の進展を目指す事例も多く見られるなど、まちづくり面・モビリティ面からも立地需要の変化が期待されます。公共交通やカーシェアリング等のサービス利便性向上により車を持たない選択が可能となれば、予算や面積の面でゆとりが出て、需要層の拡大につながる可能性があります。こうした新たな需要の開拓に向けて、供給事業者はニーズの萌芽を細やかに捉えていく必要があります。
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